よくある質問

一時金の一部が現物支給されています。農協職員のため自社製品を利用するのは当然だと思いますが、ダメなのでしょうか?

労働基準法第24条には「賃金の5原則」が記載されています。
①通貨で
②直接労働者に
③全額
④月1回以上
⑤一定期日
という内容(詳細は条文を参照)ですが、まず一部が現物支給ということは①に抵触します。

一時金が月例賃金にはあたらないため現物支給でも良いとの見解がありますが、労働協約などで現物給与に関する記載があれば認められる可能性があります。しかし、その支給内容は何でもよいというわけではありません。現物支給を行う場合には、企業はその内容について良く検討する必要があります。
まず、換金性がないものや金銭的価値の判定が困難なものは対象外です。支給されても従業員が換金・売却することができないので、経済的に困難な状況に陥る可能性があります。
加えて、現物支給ということは支給されるものが何かは置いておいて、物は受け取る個人によって価値観が変わるということです。
50,000円する商品であっても既に所有している人にとっては50,000円の価値を見いだせません。

次に、業務で欠かせないものによって支給することも認められていません。例えば業務で必要なPCを現物支給で利用することは不可能です。
また、現物支給では受け取る側に選択の余地が一切ない状況は認められません。会社側が強制的に物品を指定する形式によって現物支給を行うことはできないのです。

まとめると、業務の必要性がなく換金・売却が可能な物品を複数用意し、従業員が選べる形式でなくてはなりません。現物支給は原則認められていないので、例外措置を取るには色々と制約があります。実施することはそれほど容易ではありません。

現物支給も所属税の課税対象になります。受給者の給与明細には控除欄で控除額を記載する必要があります。
しかし、従業員は通常現物支給も課税されるということは想定していないのが普通でしょう。現物支給の後に給与明細を見て、どういうことなのかと問い合わせがくる可能性があります。
そこで、企業は現物支給の課税についてもあらかじめ対象者にアナウンスする必要があります。金銭でなくても換金性のある物品である以上、課税される旨を伝えなければなりません。
現物支給にもさまざまなケースがあり、経営困難のため全社員の賞与を現物支給することもあれば、特別な成果を上げたチームのメンバーにだけ現物支給をするというケースもあります。


加えて労働組合の運動としては一旦現物支給を認めてしまうと今後も現物支給が行われ、企業の利益を上げるために現金支給分が減り、現物支給分を多くすることで売り上げ供給を目的とした一時金へと変わる可能性が拭いきれません。

自社製品を利用するという愛社精神は結構ですが、企業から支給される賃金については理由如何を問わず「全て現金で支払う」ということを労働協約を締結し、会社側と賃金の支払い方を徹底すべきです。
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